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〒891-4208屋久島町口永良部島379-1

 植生をまもる活動 


口永良部島ではここ数年、ヤクシカやノヤギが異常に増えて、食害が目立つようになりました。
植生への影響が心配されています。
島は、タカツルランの生育域の北限であり、スダジイの原始林(2次林)が広がっています。また、天然記念物であり、絶滅危惧種に指定されているエラブオオコウモリの最大の生息地です。餌となる木々に影響があると、エラブオオコウモリの生育にも影響が及ぶことになります。
シカやノヤギの被害調査を屋久島町に要請しています。行政による調査をお願いするためにも、自らの努力として、植生への影響調査を始めました。

2015年度も、環境省グリーンワーカー事業 を請け負って、調査を始めましたが、噴火で中断しました。
    2015年度報告書をアップしました。


2014年度に環境省
平成26年度グリーンワーカー事業 「口永良部島における動植物の生息・生育状況把握事業」を請け負って、
調査を行いました。

           2014年度報告書はこちらです。

 シカやノヤギによる食害を聞き取り調査しました  


樹木や草花の現状を聞き取り調査の結果をまとめました。(2014年 環境省グリーワーカー事業)

 

 

ヤクシカの食性

区 分

草木・花の種類

好んで食べる

見られなくなったか、少なくなった。崖上などに残る

ヒメヒオオギズイセン(とびょばな)、コオニユリ、テッポウユリ、ボタンボウフウ、ツルナ、普通のフキ、バナナ(新芽)、ジンジャー(オレンジ)、クラマオ(カラムシ、裏が白いもの)、トベラ、牧草ネピア

<山中で>シマクワ、イヌビワ、オオタニワタリ、ラン類、ユウコクラン、タカツルラン新芽、リュウキュウバライチゴ(少なくなった)、木イチゴ(全滅に近い)

<樹皮も齧られている>イヌビワ、タブ、シマサルナシ

食べる

山中で、若木が見られない(少ない)

<山中で>エゴノキ、シャリンバイ、シャシャンボ、オオムラサキシキブ、樹皮では、スダジイ、タブノキ、アカメガシワなど。

<給餌試験で良く食べたもの>タブノキ、ホルトノキ、スダジイ(イタジイ)、ヒサカキ、フカノキ、ナンバンキブシ、ヒユユズリハ、アオクビユズリハ、ホルトノキ、ヤブニッケイ、ヤナギイチゴ

食べる

食痕がある

見かけるもの

 

エビネ、カクチョウラン、サクララン、ツワブキ、サネン(食べている)、アオクマノタケラン、アクマキ、エビズル(ガネブ)、ヤマブドウ、ホウロクイチゴ(葉、実)、ホテイアオイ、パチパチノキ(マルバニッケイ)、ナワシロイチゴ

不明

好まない

見かけるもの

チョウチョウバナ(コンテリギ、リュウキュウガクアジサイ)、クロボウ(クロキ)、アクチ、センリョウ、マンリョウ、ハナシュクシャ、トウワタ

好まない

よく見かけるもの(みかけ増えたよう)

イズセンリョウ、ラセイタソウ(海岸近く)、オニヤブマオ、ヤブマオウ(裏が白いのは食べる)、ウラシマソウ、シダ、ワラビ、ゼンマイ、コシタ、モクタチバナ(山中でもワカギが残る)、タイミンタチバナ

 


 聞き取り調査の結果からは、ヤクシカとノヤギの影響が、多岐にわたり、島内広範にあることが示唆される。 変化が目立つのは、ヤクシカが嫌う低木であるイズセンリョウやマオの増加とヒメヒオウギズイセン(とびょばな)、コオニユリ、テッポウユリ、ボタンボウフウ、フキなどの植物の激減である。道路際における草木の消長は、定期的に行われる草払いの影響も考えられるが、刈取りは2年に1回程度の間隔で、調査結果から明らかになった影響が顕著になる前から行われており、ヤクシカとノヤギの影響が大きいと考えられる。
本村地区では、近年、ヤクシカの生息域が広がり、道路際や耕作放棄地での植生の変化が島民の目につくようになった。その結果が、表8のような聞き取りになったと考えられる。 ノヤギが多くなった島の西部地域(本村-西之湯を結ぶラインの西)の植生の特徴は、リュウキュウチクが広範囲に繁茂している点である。耕作地跡に植えられた杉林、雑木林が点在し、照葉樹林は番屋ヶ峯の北部山麓にわずかに見られるにすぎない。聞き取り調査の結果では、竹林や雑木林の見通しが良くなり、道路際の雑草も少なくなっている状況にあるとされたが、島の西部地域については、ヤクシカの食害よりはノヤギの影響が大きいと考えられる。
島の東部地域に広がるスダジイなどの照葉樹林では、下草や低木が少なくなり、明るい森が増えていること、次世代を担う幼樹などが見られないことが明らかとなった。平坦なところや傾斜の緩い場所の樹下は、それが特に顕著である。また、冬季(2015年1月)には、数本のスダジイで、地上50~100mの高さに、樹皮全周にわたる剥ぎ食痕を目撃した。このように大規模な食痕はこれまで見られなかった。ヤクシカが歩きにくい溶岩流の森などでは、樹下は低木が茂り、幼樹なども見られる。島の東部地域の変化は、長年にわたってヤクシカの食害がすすんだ結果であると考えられ、極相である照葉樹林の森林更新の阻害も懸念される。
ヤクシカの食害は、生態系ばかりではなく、島民の暮らしにも深刻な影響を与えている。車道脇や山中の斜面では、シカ道のために溝ができ、降雨時にはがけ崩れとなり、山が荒れる原因となっている。また、従来は本村地区では見られなかったシカダニが増えている。さらに、湯向地区に多かったヒルが、島の西部にも広がる傾向にある。
なお、今回の聞き取り調査は、複数の島民からの聞き取りであり、観察情報が異なる場合もあった。また、植物名称も、かならずしも一致しているわけではなく、正確な調査としては限界がある。また、聞き取り結果の分析にさまざまな要因を考慮する必要があり、ヤクシカとノヤギの生息分布はもとより、地域、地形、植生の分布との関連もあわせて、その影響については調査する必要がある。
また、ヤクシカの影響をより正確に把握するためには、専門家による植生調査が必要である。それが実現するまでは島民による調査の継続は意義がある。

樹木の葉の給餌試験


 樹葉への採食圧を調査するために、高木の枝をツルなどを利用してヤクシカが食べやすい高さまで引き下ろして給餌したところ、付近の低木などに食痕がないにもかかわらず、タブノキやシイノキなどの12種の樹種について、枝を残して全ての葉が被食された。クスノキでは葉が全てなくなるということはなかったが食痕はみられるという結果が得られた(表8a)。これらの結果からも、照葉樹林の樹下に低木が少なくなったという変化は、ヤクシカの食害による影響であると推察される。




表8a ヤクシカへの給餌試験(2014年3月)

 

区 分

草木・花の種類

a

良く食べる

タブノキ、ホルトノキ、シイノキ、ヒサカキ、フカノキ、ナンバンキブシ、ユズリハ、アオクビユズリハ、ホルトノキ、ヤブニッケイ、ヤナギイチゴ

b

食べるが、かじる程度

クスノキ

c

食べない

 

木の枝葉をカズラなどのツルで地上近くに引き下げ、シカが食べやすくした後、1~2日後に食痕を観察した。

 



 タカツルランの調査 


絶滅危惧種IAにリストアップされているタカツルランの保護と調査を行って来た「屋久島まるごと保全協会」と
佐賀大学の辻田有紀先生の研究活動に、「えらぶ年寄り組」は協力しています。



*タカツルランの先行研究の報告は、
植物分類,地 理,45(2):131-138(1994)
無葉緑植物タカツルランの棲息場所と棲息状況
馬田 英隆, 金谷 整一, 森 健















えらぶ年寄り組」がかかわる共同研究の成果は
日本菌学会第58回大会でのポスター発表
「菌従属栄養植物タカツルランの菌根菌の多様性」
徐慧・辻田有紀・深澤遊・阿部晴恵・馬田英隆・手塚賢至・後藤利幸・牧雅之・遊川知久

第2回の「国際照葉樹林サミットin 屋久島」では、
タカツルランの研究成果を辻田有紀先生が講演され、ポスター発表でも参加しました。
2014年6月6日~8日







2014年 タカツルランなど植生の観察・調査

月日 時間 観察場所 観察内容 備考
 8月3日    新岳噴火  立ち入り禁止のため、観測を中止しております。  
6月29日 14:00~15:15 採石場跡地の上部 1個体のタカツルランが満開。
桜ランも確認
花見の会を開催。参加者15名。
6月22日 14:30~16:00 みかん山登山路 1個体の開花確認。1分から2分咲き。他の1個体のつぼみは確認できた。開花に至らず。
播種ケース一つが地表に露出。埋め戻し。
桜ラン満開
Gさん、ツルランを新たに発見
6月8日 みかん山登山路 国際照葉樹林サミットのエクスカーションとしてタカツルラン見学会。 参加者約25名
6月1日 前田、野池コース コース整備とモニタリング。最後の詰めの間約100mにリボンをかけてコース完成
5月22日 GPSカメラで、松枯れの調査  
5月22日 8:00~10:30 みかん山登山路 埋設した種ケースの2~3が地表に出ていた。
それぞれの個体に異常なし。
5月21日 GPSカメラで、松枯れの調査  
5月6日 1000-1400 寝待→仁田→ピーク526m南尾根 植生モニタリング、GPSで仁田→野池コースの整備  
5月4日 930-1700 前田→野池→前田 植生モニタリング、GPSで、登り口、野池近辺のコース確定  
4月4日 1000-1700 向江浜→野池→前田 タカツルランの新規発見できず。一般的な樹林モニタリング、GPSによる登山路の整備とチェック
4月1日 800-1230 ミカン山登山道 播種した個体の確認、菌根の採取。十数個体のモニタリング。 屋久島3、口永良部3、見学参加1
3月31日 1600-1730  砂防ダム下 3個体をモニタリング 屋久島3、口永良部2、見学参加1
1月19日 1400-1530 ミカン山登山道 個体および播種ケースのチェック
年末に8本のうち5本を確認し、3本を残した。今回は、残りの3本を含め、山側、全7本を再確認。いずれも、問題なし。

 

2013年の調査


2013年 タカツルランなど植生の観察

月日 時間 観察場所 観察内容 備考
2013/12/24 1530-1630 砂防ダム下
ミカン山登山道
個体および播種ケースのチェック
1)5本を確認
播種箇所を目視確認。いずれも、サンプルに異常なし。
2)のこり3本は
日没が近づいたため、観察は見送り。
3)枝落ち
2個体のシイの木に枝落ちがあるも、ラン本体は無事。
4)一度枯れて、再生した個体(EA5)
ランが低い場所にあり、ネットもなく無防備だが、シカの食害なし。成長は見られず。
2013/11/25 1200-1350 砂防ダム下 テスト播種ケース埋め込み、個体チェック 屋久島まるごと保全協会、東北大学、年寄り組
2013/11/24 1100-1330 ミカン山登山道 タカツルラン見学会
テスト播種ケース埋め込み手伝いと東北大学辻田さんの説明
2013/11/24 1100-1630 ミカン山登山道、採石場上 テスト播種ケース埋め込み、個体チェック 屋久島まるごと保全協会、東北大学、年寄り組
2013/10/4 ミカン山登山道 2個体のサネを袋ごと回収。1個体は、サネが弾け、種が袋に溜まっていた。他の1個体は、サネは弾けておらず、採取用の袋内に種なし。
2013/10/3 1540-1640 道路南、採石場の奥 袋回収。サネが弾け採取袋に溜まっていた。
2013/9/13 新タカツルランに袋掛け
2013/8/23 1000-1200 新たにタカツルラン発見
N27'04.40"E11'35.44"#8
GPSをはじめて使用、しい大木N27'03.57"E11738.12"#7
2013/7/31 タカツルランの種、袋掛け 花はほゞ終了、枯れかけている状態。
豆のさやはしっかり成長。念のため花を外して袋掛けしました。
根を採取された個体で4~5本を2つの袋に分けました。他の個体では、3本ほどを一つの袋で袋掛けしました。
2013/7/31 新たにタカツルラン発見
6月27日 1100-1500 新岳登山コース タカツルラン#398の新芽が、シカに食べられた様子のあることを確認。ネットの上部を引き下げての食害です。他は順調。この日、新岳の西斜面ではマルバツツジが満開。
6月23日     屋久島環境文化財団に申請していた平成25年度研究助成が認められました。テーマは「屋久島と口永良部島における照葉樹林内の菌共生に関する保全と研究」で、タカツルランの調査・研究です。屋久島まるごと保全協会、東北大学植物園と共に、えらぶ年寄り組も参加します。
6月18日 1100-1300 新岳登山コース タカツルラン#396の花を数個採取。DNA分析用のサンプルです。
6月11日 1100-1300 新岳登山コース 7か所のタカツルランをチェックしました。









5月26日 1100-1500 新岳登山コース、山ん神 シカの食害から守るため、タカツルランの保全活動に参加。シダジイのヒコバエに食痕あり。 屋久島まるごと保全協会、東北大学、年寄り組
3月21日 一周道路、砕石場入口付近 樹木点検、食痕はごくわずか。
植生を隣接区域と比較するために、森の一画に、シカの侵入を防ぐネットを張った。長期観測の準備。
慶應義塾大学学生7名
3月19日 一周道路、砕石場入口付近 各種の樹木の枝を、引っ張り下げる。シカがどの樹木の葉を食べるかを、確認するため。 慶應義塾大学学生7名
3月10日 一周道路、砕石場入口付近 樹木点検、食痕多数
3月2日 一周道路、砕石場入口付近 樹木の葉を確認
2月中旬 一周道路、砕石場入口付近 各種の樹木の枝を、引っ張り下げる。
シカがどの樹木の葉を食べるかを、確認するため。




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